目立ちたがり屋か?

中高と演劇部に入った理由は、舞台の上で素敵なドレスを着たかったから。だから綺麗な服が着られない役には興味がなかった。

私がタカビーなのを皆知っていたせいか、顧問の先生に贔屓されていたのか、私にはいつもヒロイン役しか来なかった。

有名どころでは、ジュリエット、夕鶴のつう、若草物語のエイミー、白雪姫、シンデレラ、くるみ割り人形、ヘレンケラー、あとは創作や無名の戯曲でも必ずヒロインだった。

それが当たり前だと思っていた。その陰には汚れ役や裏方をする人たちがたくさんいるのに、私は彼等を最初から脇役を生きる人間と決めつけて、注意を払わなかった。

演劇部って女ばかりだから男役も女の子がやるケースが多いんだけど、私はチビなので男役はやった事がない。

当時は演技力に自信を持っていたが、今考えるとたいしたことない。いつもどの役も同じ演技。……っていうかそのまんまいつもの自分だった気がする。

途中で舞台装置が用意出来ずボツになったが、ガラスの仮面にも出て来た「吸血鬼カーミラ」は、妖しいオーラが見えるようで、私のハマリ役と言われ絶賛された。そう言えば九尾の狐と夕鶴もハマリ役と……。妖怪ばっかじゃないか。(^^;) 実は賞賛されてたんじゃなくて、けなされていたのか?

スポットライトを浴びるのは大好きだった。ライトを向けられると観客の顔は見えない。自分だけの世界に入り込める。その時私は完全に別人だった。舞台が終わった時には盛大な拍手だってもらえる。気持ちはすっかり舞台女優だ。

他校との大きな演劇大会は更に大好きだった。

学校単位では1位になったことは1度もないけど、個人的な賞をもらって、私のファンクラブも出来た。花とかお菓子のプレゼントもいっぱいもらったし、何度も写真を撮らせてと言われ、最高にいい気分だった。

なんと私のテーマ曲を作詞作曲してくれた人もいた。

どこで歌えって言うの?(^^;)

更に笑える事に、その歌の題名「桃色の妖精」でした。なーんか崇められているのか貶められているのか、微妙にわからないタイトルではあったけど、まあ何であれファンがいるというのは嬉しい事。

自分はいつも注目され、ちやほやされるに値する人間だと、信じて疑わなかった。

私はいつも両極端に見られた。お嬢様か、不良か。

私のどの面を見ているかによって、人は違った反応を示すのだろう。

高1の時、先輩にバンドに誘われた。何でもやってみたがりの私は、もちろん承諾した。

でも誘ってくれたバンドの人は、私が当然ピアノを弾けると思っていた。ピアノは1年半習ったが、すぐ飽きて止めたので、ソナチネまでしか弾けなかった。楽譜を見て即興で弾けるほど楽譜も読めなかった。

私は見るからに金持ちそうで、ピアノを弾けないなんて思わなかったと本当にびっくりされた。実際成長過程でお金にだけは困った事がないせいだと思うが、どうやらその人は私をお嬢様と思ったらしい。キーボードの担当として考えていたらしいが、私が弾けないと言うとボーカルにしてくれて、自分がキーボードに回った。そのかわり歌う曲がガラリと変わってしまい、バンドのメンバーには迷惑だったようだ。

ちょうどその頃、音楽の先生が私の声に目をつけてくれて、本格的に声楽をやらないかと誘ってくれていた。私はそれもいいかなと思い、週2回の放課後、音楽室に練習に通っていた。イタリア語のオペラを歌う為。もう何も覚えてないけどね。「帰れソレントへ」とか「サンタルチア」くらいなら、授業中にも歌ったからちょっと覚えているけど、もう声は出ないだろう。ピアノも練習させられた。

バンドを始めて、シーナ・イーストンとかシンディ・ローパーとかオリビア・ニュートンジョーとかマドンナとか歌った気がするが、これもよく覚えていない。だって英語苦手で意味わからず歌っていたから。

ステージでスポットを浴びて大声出せるのは本当に気持ちよかった。

そんなある日音楽の先生が、最近声が乱れていると言った。

私は関係あるかなと思って、バンドの事を話した。すると、先生は怒って、すぐに止めなさいと言った。そして、もう慣れて来たと思うから、ちゃんとした先生を紹介するので、真面目に声楽を習いなさいと言った。私には素質があって、華もあるからだそうだ。先生は素質だけあっても華がなければ、決して歌手にはなれないと言った。

でも私は声楽よりバンドの方が楽しかったので、音楽の先生に謝って、練習を止めた。先生は残念がって、気が変わったらいつでも来なさいと言ってくれた。

たぶんあの時、声楽を真面目に習っていてもオペラ歌手にはなれなかったと思うし、バンドを続けていても、プロになれたわけじゃない。演劇だって真面目に取り組んでも女優にはなれなかったと思う。私の才能が通用するのは、狭い狭い学校の中でだけだ。

1度だけ素人映画に出た事もある。これも高1の時だった。

たぶんまだテレビでも映画でも「スケバン刑事」をやってなかった頃だと思うが、どっかの映画研究会が「スケバン刑事」を撮りたいが、麗美役をこなせる若い女性が見つからないと言って、誰かの紹介で学校経由で私にコンタクトを取って来たのだった。学校経由だったところを見ると、演劇大会か何かで私を知ったのかもしれない。ちょうどその直前に夕鶴をやっていたから。

さて、麗美って知ってます? これでもかってほど悪どい敵役のお嬢様です。

上品で慈悲深い仮面の下に、どす黒い欲望が渦巻く麗美を、きっとこなせる高校生がいると噂で聞いた。そう言われてちょっと複雑。素直に喜んでいいものか?

二つの顔を表現出来る女の子がいないので、是非やって欲しいと激しい説得に合い、最後はおだてに乗せられて(当時からおだてに弱い)、門限6時半を守れるならやってもいいと返事した。

でも、噂だけで私にそんな役が出来ると信じるなんて、今考えると変な人だ。

映画は舞台のように入り込めないので難しかった。人も大勢見ていて恥ずかしいし、セリフも細切れに撮影するから、感情移入出来ない。私的には失敗だったが、一応監督さんは満足の出来だと言ってくれて、肩の荷が降りた。

お金も少し貰った。次の映画にも誘われたが、撮影の気恥ずかしさを知ってしまったので、丁重にお断りした。完成した映画はあまりにも恥ずかしくて直視出来なかったので、よく覚えていない。今思うとビデオにダビングして貰っておけばよかった。きっと笑えたのに。

演技も歌も、どれもこれも楽しくて好きだったが、どれも中途半端だった。ほんのちょっとづつ、人より何でも上手に出来たために、かえって諦めがつかなくなる器用貧乏タイプだった。

馬鹿高校の中だったので勉強も出来たが、その頃は真面目な道に進む気は全くなかった。ただテストの順位がはり出されたりするのは、大好きだった。思えば労せずして一番を取る満足が得られる、非常に楽な環境だった。

当時私は将来について、楽しくてお金がいっぱいもらえる仕事なら何でもいいと思っていたが、候補にあがるのは人前で目立つ職業ばかりだった。よっぽど目立ちたがりだったんだろう。

そんな私がどこへも行かず、誰とも会わず、目立たずひっそりと暮らしている今に、満足しているはずはない。だからこんなところで、過去の栄光に浸りながら秘密を暴露しているんだろう。15年以上経っても少しも成長していない気がする。ついたのは脂肪だけか……。

昔母が言っていた。30になっても40になっても、気持ちは18のまま止まるのよって。

本当だった。

学校は嫌いだったけど、学校には賞賛と満足を得られる機会がたくさんあった。

女は結婚すると本当につまらない。

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