母の教えと嫉妬心(不倫)

17才の私が予備校のY先生とつきあっているとき、母は見て見ぬフリをしていた。

だが18になってから、既婚であることを告げられ自分から別れを決意した。決意はしたものの毎日落胆して何も手につかないでいると、今何をすればいいのか教えるからついて来るようにと言って外出の準備を始めた。

母は、男を本気で好きになってはいけない、まして人のものを欲しがるような浅ましいマネもしてはいけないと常に言っていたが、それでもどうしてもその男が自分に必要だと思ったなら、手に入れる努力をすべきだと言った。

私は母に促されるままに電車に乗り、Y先生の住所をたよりに文京区のマンションに辿り着いた。

母はまず情報を集める事だ、そうでないとどう動けばいいのか決められないと言った。

そしてマンションの管理人に、この辺で部屋を探しているが、このマンションに空き部屋はあるかとか、家賃はいくらかとか、間取りはどの部屋も同じかとか、色々聞き出して、どうやったのか最後には、マンションの部屋割りを管理人に取り出させた。

そこには空き部屋状況と供に、今まで知らなかったY先生の電話番号が記載されており、母はすばやくそれを盗み見て暗記した。(私には教えてくれなかった)

管理人に、Y先生の住む部屋と同じ間取りの空き部屋を見せてもらい、マンションをあとにした。

家賃は18万の賃貸だった。Y先生の収入は週2の予備校で月30万、もう一ケ所安いところに一日行っていると聞いていたので合計40万くらいだろうか。妻は教師だから月25万くらい。家賃を払っても貯蓄は出来る程度だから、もしかしたら医者になったのを機に家を買うかもしれない。アプローチするなら、そうなる前の方が都合がいいので、急ぐべきだと母は言った。

次に区役所へ行き、住民票を取った。

ひとさまの住民票がこんなに簡単に取れるとは、知らなかった。

妻の名前と生年月日、子供の名前と年がわかった。

母は戸籍も取った。

結婚年月日や、妻の旧姓、両親の住所、氏名、年令などがわかった。

それから国会図書館へ行った。Y先生の妻が、公立中学の教師であることを知っていたので、片っ端から名簿を探って、卒業大学なども明らかになった。

写真は出て来なかった。

家に帰ってから、母は調べた番号に何食わぬ顔で電話した。

子供が出て、しばらくお父さんとお母さんの事を聞き出していた。

それからまた数時間して電話すると、今度は妻が出た。

母はセールスのフリをして長い間楽し気にしゃべっていた。

少し話せばひととなりがわかると言うのだった。そして電話を切ったあと、

「たいした女ではないわ。あまり頭もよくない。あなたがその気なら必ず奪い取れるでしょうね。勧めはしないけれど」

と言った。そんな事は言われるまでもなく私も、奪おうと思えば簡単だろうと思っていた。(昔は自信過剰だった)

「顔を知りたければ明日、見に行きましょう」

と言うので、私はもういいと答えた。

私はY先生を妻から奪い取りたいと思っていたわけではなかった。そんな事をして結婚しても幸せではないだろうと思えたし、Y先生の妻には全く嫉妬心が起こらなかったので、どんな顔かに興味もなかった。私は女性としてではなく、人間としてY先生とつきあいたかった。すると母は

「それがわかっているなら、もう会うべきではないとわかるわね」

と私に念を押した。結局はそれが言いたかったのかもしれない。

何をする時にも、まず最初に情報を集めること。そして考えること。あとは迷わず信じた通り行動する。

これが母の教えだった。

その通りなのだろうけれど、恋愛に関してだけは、私には情報を集める行動力と勇気はないだろう。

さて、私は自分がかなり嫉妬深い人間だと思っているが、子持ちで33のY先生の妻は18の私にとっては「気の毒なおばさん」でしかなかった。でももしもこの時、彼女が東大卒だったら、私はきっと猛烈な嫉妬心を感じて、必ず奪ってやると思ったかもしれないと思うのだ。私が彼女に嫉妬を感じなかったのは、無意識に自分より下の人間と思っていたからではないか。若いというだけでもかなりの優越感を感じていた気がする。

今その時の彼女と同じ年になった。私は18の子から見たら「気の毒なおばさん」になってしまった。

25〜6の時、夫はY先生と同じ予備校で数学を教えていた。ある日、出かけた夫から電話で、定期がないんだけど落としたのか忘れたのかわからないから、鞄の中を見てくれと言われた。その時鞄の中に、予備校の生徒からの手紙を何通か見つけた。手紙をくれる子が2人いたようだ。「相談にのってくれてありがとう」とか「いつも駅まで一緒に帰ってくれてありがとう」とか「先生が大好き」とか、「予備校を卒業しても会いたい」とか色々書いてあった。<読むなよ(^^;)

ああ、私もこういう気持ちだったわ(手紙は出さなかったけど)と当時が思い出されて、かわいいなと思い、そして生徒から見たら私はライバル視するまでもない「おばさん」なんだろうなとも思った。でもやっぱり嫉妬心は起こらなかった。私は手紙をそっと戻し、夫には見つけた事を言わないでおいた。

もしも夫がその子達を好きだと思うようだったら、別れてあげようと決めていた。それは18の時の自分への憐れみだったかもしれない。しかしその後夫は何も言って来なかったのでそのままにした。手紙はいつの間にか鞄から消えていた。

でもこの時、もしも生徒の手紙に「東大に受かりました」と書いてあったら、私は嫉妬に狂って別れてやるもんかと思ったに違いないと思うのだ。

つまり私が嫉妬を感じるキーワードは「東大」なのだ。劣等感から来るものなんだろうか。それ以外の事柄について私より才能がある人に対しては、素直に尊敬を感じるのに、「東大出の女性」には尊敬はするものの、どうしても心穏やかでいられないのだった。

そして20代まではなかったが、30過ぎると今度は「若い」という事への強い嫉妬心が生まれた。もしも手紙を見つけたのが今だったら、「若い」生徒に嫉妬したかもしれない。

思うに夫も私と同じなのではないだろうか。

夫は全くと言ってよいほど嫉妬しない。私が男友達と出かけると言っても、どこの誰だか聞かないし、どこへ行くのかも、何時に帰るかも何も聞かない。何の用事だったのかさえも聞かない。私を信用しているというのではなく、興味がないといった感じだ。

ところが相手が東大理1だとわかると、ちょっと喋っただけでも途端に嫉妬するのだ。東大理3の知り合いはいないのでわからないけど、きっと理3でも嫉妬するんだろう。自分も理3だけど、現役時に理1に落ちているのが、彼の中でトラウマになっているのかもしれない。勉強に関してはかなり自信過剰な人だ。

理2は下と思っているせいか、理2の友達には非常に寛大で、忙しい自分のかわりに私の仕事のパートナーとして紹介したりするし、2人で出かけても一緒に食事をしても平気な顔である。1度夫の友達(理2)に手を握られ、ホテルに誘われた事を話した時も、馬鹿なやつと笑っただけだった。私が絶対に相手にしないと確信しているようだった。

つまり私達は超学歴志向の似たもの夫婦なのだった。お互いに自分より下の人間を相手にするはずないとわかっているので、寛大になれるのかもしれない。イヤなやつだが、どうやら自分が負けるかもと思った相手にだけ、嫉妬心が沸き上がるらしい。

それでも夫は私に、「俺より学歴、身長、年収、すべてが勝った人物が翡翠を好きになる事があったら、その時だけは別れてあげるよ。でも上手くいかなかったら戻って来てね」と言う。そんなやついないさ、と思っているのか、いても私を好きにならないと思っているのか、余裕を見せている。

許容する学歴は理1と理3と京大の医学部のみ、身長は180以上、年収は1500万以上だそうだ。その一つでも欠けていたら、私が離婚したいと言っても絶対別れないそうである。

私は「私より優れてなくても他の人を好きになったら、いつでも別れてあげるよ」と答えた。「翡翠より優れていない人を好きになるわけないと知ってて言ってるでしょ」と言われた。そんなつもりはなかったけど、そうなのかもしれない。

夫が東大を休学する前、BST(ベッドサイドティーチング)のグループに1人、女性がいた。容姿は最悪だったが、私の心は穏やかじゃなかった。私が何度も落ちた理3に現役で受かった「若い」女の子に嫉妬を感じたからだ。別に夫がその子に好意を持つだろうと思ったわけではなく、自分より優れた人間が意識出来る範囲に存在するのが、非常に腹立たしかったのだと思う。

夫が休学したいと言った時、一応は止めたが、休学して女の子のいないグループになった方がいいかなって、ちらりと思った。

1年間駿台予備校に通った時も、穏やかになれない相手が1人いた。駿台では成績順に医系スーパー4クラス、その下にハイレベル国医4クラスの合計8クラスが医学系進学希望者だった。

夫と彼女は医系スーパーの1番上のAクラスだったが、座席も成績順なので、後ろの席に行くほど屈辱感は増す。夫はいつも5番以内、彼女は20番以内だったが、私は毎月彼女より下だった。点数にすればたぶん5点くらいの差しかなかったはずだが、ただの1度も勝てなかった。彼女は髪を水色に染め、あみタイツにきわどいミニスカートを履き、タトゥーをしていた。美人ではないがセクシーで、私と同種類のタイプだった。私は彼女に並々ならぬ嫉妬を感じたが、彼女は私を相手にしていなかったと思う。

駿台の医系スーパーの1番上クラス、模試で50番以内までは理3確実と言われていたが、私だけは落ちた。(彼女の彼氏も落ちたが)それまでの三回は早稲田を卒業したかったので、練習受けだったが、その時は全力で受けた。自信もあった。でも彼女は受かり私は落ちたのだった。 夢の中で私の髪の色が水色なのは、彼女になりたかったという願望なのかもしれない。

私も夫も友達付き合いの中で自分の本心をさらけだす事はない。私はさらけだしているかのように見えるらしいが、ホームページで書いているような事は、リアルの友達には絶対言わないし、世間話に興味がなく他に話題もないので、友達といても殆ど無口である。相手も私の話など聞きたくないだろうと思ってしまうのだ。

それに諍いが面倒なので、何かあれば必ず自分が折れるようにしている。だって友達と言ったって親友というほどじゃないし、どうせ関係ない人だもの。私をわかってもらう必要なんかないし、誰でも自分の考えだけが正しいと思っているのだから、反論しても無駄な労力。

だから私も夫も「心が広く寛大で優しい人」と言われている。でも本当は全然違う。寛大なのは嫉妬を感じない相手だから。それだけ。優しいわけじゃない。

それにしてもどうして私は、大好きだと思う人は、自分の醜くイヤな面をとことん暴露してしまう癖があります。優しい人のフリをしておけば少なくとも嫌われないのにね。何でこんなに馬鹿なんだろうと不思議でしょうがない。そう思うなら止めろよって感じなんですが、でもやっちゃうのよね。本質的にマゾで露出狂だからかな?

夢の中でいつも髪が水色なのはどうしてかなって考えていたら、とりとめもなく思い出しましたので書いてみました。

次のコラム トップ このページのトップへ
恋愛小説
恋愛小説〜光の中で
恋愛小説〜マグダラの万里亜
恋愛小説〜らぶちゃんぽん
ホラー小説〜忘却の夏
恋愛小説〜ミレニアム
思春期小説
思春期小説〜不要家族
そして繰り返される
笑い話コラム
ラブレターの思い出
ナンパ笑い話
神経性胃炎の苦すぎる屈辱体験
ファーストキスは幼稚園!
変人に同類と思われて!?
転校生の災難
病院で受けた屈辱
痴漢話コラム
痴漢の恐怖
痴漢少年に怒られた!
絶体絶命のピンチ
史上最悪のナンパ師
雑話コラム
小学生にプロポーズ!?
お気に入りの小学生第二弾
忘れられない歯医者さんの言葉
伯父さんの憐れ
友達話コラム
アニキと呼んでいた男友達
女性に惚れた私はレズか?
年上のお友達
小学生時代の男友達
想い出話コラム
部活の思い出
目立ちたがり屋か?
習い事の思い出
女王様だった小学生
心の深淵コラム
母の教えと嫉妬心(不倫)
暴走族になり損ねた14才
祖母と母の教えの狭間で
愛情談義コラム
焦りを感じる理由
遺伝子の連鎖反応
愛されたい病
女の行く末
恋愛小説TOP
恋愛小説HOME