恋愛小説〜らぶちゃんぽん

恋愛ミステリーです。

第二話「死者の日記〜前編」

2001/9/22(土)

無料のレンタル日記を借りたので、今日からWebで書こうと思う。

誰かに読んで欲しいわけじゃない。

だから公開はしない。

でももしかしたら誰かが見つけて覗くかも?

それもスリルがあって楽しい。

明日は玲二とつきあい始めてちょうど一年目。

でもきっと玲二は記念日を覚えてないだろうな。

優しいけど、どこか抜けているから。

まだ暑いけど、玲二の大好きなちゃんぽんを食べに行こう。

色気がないね。

2001/9/23(日)

夕方電話しても出なかったのに、玲二はアパートにいた。

バイトをクビになったって拗ねている。

私より五つも年上のくせに、時々子供みたい。

痩せてひょろっとしてるから、肉体労働はきついみたい。

玲二はバンドをやってる。

いつかプロになるんだってがんばってる。

バンド関係で女の人と一緒の事もあるけど、私は平気。

玲二が好きなようにすればいいと思う。

ちゃんぽんを食べに行こうよと誘うと、金がないとふてくされてる。

私もお金はない。

仕送りはたった十万だし、家賃は六万もする。

ファーストフードでバイトしてるけど、二万しか貰えない。

仕送りは家賃支払い日の月末に来るから、今は最高にお金がない。

財布には千円札が一枚と細かいのが少し。

だけど今日は絶対にちゃんぽんを食べに行きたかった。

私達の思い出の場所だから。

寝転んだ玲二を無理矢理連れ出して、一杯のちゃんぽんを半分こにした。

懐かしいね。

去年の冬、知り合ったばかりの私達はいつもお金がなくて、ちゃんぽんを半分こしたね。

お店の人が嫌な顔しても全然気にしないで、堂々と半分こしたね。

私は玲二にいっぱい食べて欲しくて、いつもちょっとしか食べなかった。

そうすると玲二が、

「マキ、これ食え」

って言って、私の口にお肉やかまぼこを運んでくれる。

大きいちゃんぽんの丼を真ん中にして、両側からつついて食べたね。

最後の一口は必ず私にくれたね。

今年の冬も、ちゃんぽんを食べに行こうね。

2001/9/24(月)

平日は嫌い。

玲二に会えないから。

私は短大生で授業があるしバイトもしているし、玲二の練習も一度だって見に行けない。

平日の方がスタジオを借りるのが安いから、玲二は平日練習している。

土日が待ち遠しい。

2001/9/25(火)

今日、渋谷で偶然玲二を見かけた。

すごく派手で綺麗な人と一緒だった。

私は声をかけられなかった。

玲二は私が渋谷のマックでバイトしているって知ってる。

なのに、平然と渋谷を歩いているって事は、やましい気持ちがないからだよね。

電話して欲しい。

2001/9/26(水)

今日もバイト。

気持ちが晴れない。

電話したいけど、なんとなく出来ない。

2001/9/27(木)

今日は就職ガイダンスがあった。

別に就職先なんかどこでもいい。

銀行に行く人が多いみたい。

英文科なんか出ても、英語が話せるようになるわけじゃないし、どこでも就職出来れば嬉しい。

そうすれば今よりは玲二を助ける事が出来るから。

お給料っていくらもらえるんだろう?

仕送りよりはマシだよね。

2001/9/28(金)

明日は土曜日。

早く今日が終わらないかな。

仕送りが来た。家賃を払って三万降ろした。

明日は玲二におごってあげられるよ。

2001/9/29(土)

土日が来るのを毎週楽しみにしているのに。

それなのに、今日は玲二に会えないの。

お友達と出かけるんだって。

仕方ないよね。

2001/9/30(日)

朝から悪戯電話が何度もあった。

気持ち悪いから途中で出るのを止めた。

でももしかしたらその中の一つが玲二かもしれないと思うと、出たい気もする。

誰だろう。

前もたまにはあったけど、こんなに連続してかかってくるのは初めて。

出ると同時に無言で切れてる。

誰だろう。

今日は玲二にちょっとしか会えなかった。

2001/10/1(月)

無言電話は今日もあった。

玲二の家を訪ねた。

留守だったけど合鍵をもらってるから勝手に入った。

少しだけ掃除して待ってたけど、帰って来なかった。

相談したかったのに。

玲二、昨日電話を止められたって言ってた。

家賃も滞納しているのかな。

大丈夫かな。

 松本は画面の文字を懸命に追った。あっという間に一ページ読み終わった。文字が小さいので老眼鏡が欲しいところだ。

 教えられた通りトラックパットの上に指を置いて、次へというボタンの上にポインタを合わせようとするが、なかなか上手く行かない。やっと合わせてクリックしたが、何秒経っても次の日記が表示されない。

(随分遅いな、何なんだ? 操作が違ったのか)

 松本がイライラと待っていると、そこに写真が表示され始めた。

2001/10/2(火)

今日もバイトに行く途中で玲二を見かけた。

なんと隠し撮りしちゃいました。

だって玲二の写真、一枚も持っていないんだもの。

かっこいいでしょ〜!

でもね、撮った後で玲二、女の人と落ち合ってどっか行っちゃった。

先週と同じひとだった。

誰? 怖くて聞けない。

2001/10/3(水)

風邪ひいてバイト休んじゃった。

でも本当は風邪なんかじゃなくて、玲二のことが心配で眠れなかっただけ。

あの女の人、きっとバンドの仲間なんだろうけど、でもなんだかやけに仲よさそうだった。

電話止められてから、私の方から玲二のアパートに行くばっかり。

今日も電話には出なかった。

だってまたきっと悪戯だから。

玲二は電話止められているからかけて来ない。

玲二の他にうちに電話して来る人、誰もいない。

だから、悪戯だ。

2001/10/4(木)

大学を休んで寝ていたら、昼間も電話が何度も鳴っていた。

嫌になって、午後から行った。

2001/10/5(金)

なるべくお金を使わないように一週間暮らした。

お金はすべて、玲二のために使いたい。

ちょっとしかないけど、それでも玲二と一緒に使いたいの。

2001/10/6(土)

朝、玲二のアパートに行った。

まだ寝てたけど、合鍵で入った。

なのに全然起きないの。

寝顔、ずっと見ていた。

こういう日が毎日続いたらいいのに。

お昼にちゃんぽんを食べに行った。

今日は半分こじゃないよ。

だって仕送りまだ残っているもん。

一つづつ頼んで、更に餃子とビールも!

いつになく豪勢だな〜って玲二が笑った。

月末になったらまた激貧になるけど、玲二が嬉しそうにしてくれたから私も嬉しい。

だけど本音は、半分この方が嬉しい。

玲二と一つのものを分け合うって事が嬉しいの。

2001/10/7(日)

玲二は新しいバイトを見つけた。

日曜日の朝から晩まで、レコード屋さん。

日曜日はもう会えないね。

だけどバイトしないと家賃滞納で追い出されちゃうからしょうがない。

でもそうなったらうちに来てくれるかも?

それもいいな。

なんてちょっとだけ思った。

2001/10/8(月)

無言電話の事、相談するの忘れてしまった。

会うと嬉しくてそれどころじゃないんだもん。

玲二は何も言ってなかったから電話していないはず。

電話するお金もないしね。

今日もまた電話が鳴っている。

眠れない。

2001/10/9(火)

なんなの?

また同じ時間、同じ場所で、同じ人と会ってる。

もしかしてスタジオに行くのに待ち合わせてるの?

玲二はバンドのメンバーに私を紹介してくれない。

もしかしてその女の人がいるから、紹介してくれないの?

バイトでミスばかりしてしまった。

クビになるかもしれない。

2001/10/10(水)

まだ一年なのに就職就職って、嫌になる。

短大じゃなくて四大にすればよかった。

でも早く働けた方が玲二の役に立つと思えば、短大でよかったのかも。

そう言えば私、大学の友達と遊んだ事、一回もない。

去年、予備校に通う為に一人暮しだった時、まだ玲二と知り合ってない頃は、女の子と出かける事もあったけど、玲二とつきあってからは、誰とも話さなくなった。

時間もお金も、玲二のためだけに使いたい。

関心も玲二にしかない。

玲二のことは誰にも言ってない。

紹介したい友達が誰もいなし、もしいても誰にも見せたくない。

友達に彼氏取られるなんて、日常茶飯事だ。

玲二はかっこいい。

絶対派手で自信満々のイヤミ女に取られちゃうよ。

私ももっと目立つ化粧とかした方がいいのかな。

私って昔から地味で目立たない子だった。

2001/10/11(木)

大学は市ヶ谷にある。

私の住んでいるところから大学まで、歩いて三十分ちょっとかかるけど、電車賃を節約する為と美容の為に歩いてる。

玲二は神田に住んでる。

玲二の家に行く時も、歩きだよ。

かなり遠いけど、そうしないと玲二に御飯食べさせてあげられない。

大学に入ってからかなり痩せた。

朝も昼も節約して食べないから。

本当はお弁当屋さんとかでバイトすれば、残り物もらえるかなって思うけど。 ファーストフードってね、残っても捨てちゃう癖に絶対くれないんだよ。

しかも、浮浪者に拾われないように、わざとぐちゃぐちゃにしてから捨てるの。

なんかいじわるだよね。

2001/10/12(金)

明日は土曜日。

嬉しい。

土日の為だけに毎日生きている気がする。

私の生活はすべて玲二を中心にまわってるけど、それが幸せなんだよね。

この気持ちって、男の人にはわからないんだろうな。

明日綺麗でいるために、今日は早く眠ろうと思うんだけど、そわそわして眠れないの。

眠れないのはそれだけじゃないんだけどね。

例の悪戯電話、うるさくてしょうがない。

私も電話、止めちゃおうかな。

どうせ玲二からかかって来ないなら、電話なんかいらない。

基本料金、もったいないもの。

と、思ったけど、ネット出来なくなっちゃうからダメだ;;;

ネットはお金かかるけど、でも私の唯一の気晴らしなんだから。

2001/10/13(土)

お金が底をついて来た。

こんなに節約しているのに、どうして?

今日はまたちゃんぽん半分こ。

それでも幸せだけど。

っていうか、その方が幸せ。

だって私は食べなくたっていいんだもん。

玲二はもう日曜日のバイトを辞めちゃったんだって。

会えるから嬉しいけど、生活大丈夫なのかな。

平日の夜、バイトしているからって言うけど、何しているのか教えてくれない。

2001/10/14(日)

玲二、毎週毎週ちゃんぽんで、よく飽きないなと思う。

本当にちゃんぽんが好きだよね。

実家が長崎なんだけど、それとは別に関係ないって言ってた。

私達がラブちゃんぽんするのは、月の後半。

前半はお金があるから一応私の分も取る。

だけど私は半分以上残してしまって、結局残りを玲二が食べる。

本当に美味しそうに食べるから、見ていて楽しいの。

2001/10/15(月)

また玲二に悪戯電話の事相談するの忘れちゃった。

もうモジュラージャックを抜いておこう。

ネットだけ出来ればいいんだから、抜き換える必要はない。

そう思いながらつい習慣で抜き換えてしまう。

2001/10/16(火)

女の勘はするどいって言うけど、なんとなくあの女の人が悪戯電話してくるのかなって気がして来た。

今日もまた、玲二はあの人と待ち合わせ。

こんなに近くにいるのに、いつ私に気付いてくれるの?

私には見せないカッコつけた顔。

私の前では優しいけど、いつもダラッとしてる。

それは喜んでいい事なの?

2001/10/17(水)

今日でバイトを止める事にした。

毎週毎週、玲二が女の人と一緒の所なんか見たくない。

バイトすれば交通費が出て、ついでに渋谷で買い物出来るとか思ったけど、もう止めにする。

地元でバイト探す。

知らなければ辛くないけど、目の当たりにするのは耐えられないよ。

たとえただの友達でもさ、あんなに綺麗な人なんだもの。

2001/10/18(木)

お茶の水の回転寿司でバイトすることにした。

残り物くれるって言うから。

面接で真っ先に聞いちゃって、苦笑いされた。

でも生活に困ってるんだよ、私は。

玲二だってたまにはお寿司食べたいはず。

キライじゃないよね?

そう言えば聞いた事なかったけど。

2001/10/19(金)

回転寿司初仕事。

交通費は請求しておいて歩いて行くと、ちょっとだけ潤う。

それにしても疲れた〜

ファーストフードより疲れる。

でもパック三つ分の収穫あり。

傷まなそうなお稲荷さんとかカンピョウ巻きを二パック、生物を一パック。

生物は今日中に食べなくちゃね。

帰りに玲二のアパートに寄ったけど、玲二はいなかった。

生物とカンピョウ巻きを置いて、メモを書いておいた。

食べてくれたかな?

電話がないと不便。

2001/10/20(土)

大失敗。

玲二、お寿司何より嫌いなんだって。

ちゃんと聞いておけばよかった。

ゴメンね。

謝ったけど不愉快そうな顔してる。

残骸がないけどどうしたのかと思ったら、友達にあげたんだって。

平日勝手に上がるなと言われてしまった。

ショック。

2001/10/21(日)

玲二はまだ怒っている。

知らなかったんだから、そんなに怒らなくてもいいのにね。

御機嫌を取る為にちゃんぽんを食べに行った。

機嫌が直った。

単純。子供みたい。

そんなところも大好き。

2001/10/22(月)

夕方から夜まで回転寿司でバイト。

玲二に平日来るなと言われたから、毎日バイトする事にした。

そうすると月に五万円くらい貰える。

疲れるけど、玲二に好きなだけちゃんぽんを食べさせてあげられる。

私は毎日お寿司を貰って帰れば、平日食費もかからない。

2001/10/23(火)

私、本当は食いしん坊だったんだなと思った。

ウニとかいくらとか甘エビとか、ずっと美味しいものを食べていなかったから、すごくたくさん食べてしまう。

これじゃ太っちゃう。

玲二はデブが大嫌いなのに。

これからは貰って来るのは一パックにしよう。

ちょっと欲張り過ぎだった。

2001/10/24(水)

カウンターが進んでる。

誰かこのページを発見したの?

誰かしら?

たまたま?

明日も進んでいたらどうしよう。

誰が見ているのか気になります。

2001/10/25(木)

今日も一つカウンターが動いてる。

私以外の誰かがこのページを見に来たという事だ。

あなたはどなたですか?

2001/10/26(金)

来なくなった……のかな?

呼び掛けたから怖れをなして逃げちゃったのかな?

ホッとしたけど、ちょっとだけ寂しいような気もする。

2001/10/27(土)

今日もラブちゃんぽんの日。

だって究極にお金がない。

早く仕送り来ないかな。

玲二、顔色が悪い。

平日何を食べているのか聞いたけど、あまり食べていないみたい。

何で平日は行っちゃいけないんだろう?

悪戯電話の事、相談してみた。

電話切っとけって。

それだけ?

ちょっと寂しい。

2001/10/28(日)

またラブちゃんぽんの日。

私は普段いっぱい食べているから、食べるフリだけして、なるべく玲二に食べてもらうようにした。

でも玲二は優しいから、食べていない私を気にしてくれる。

最後の一口、今日も押し付けあって、結局私が食べた。

玲二は頑固だから、言い出したらきかない。

いつかビックになったら、好きなだけ旨いもん食わしてやるからなって言ってくれた。

ビックになろうがなるまいが、美味しいものを食べさせてくれようがくれまいが、そんな事関係なく、私は玲二が大好き。

2001/10/29(月)

やっと仕送りが来た。

毎月親に、仕送りが届いたよと電話しておかないとうるさいから、めんどくさい。

福島まで長距離電話、結構高いんだから。

家賃を払って、三万降ろした。

自動引き落としの分、毎月一万残して、それにバイト代二万弱足してぎりぎりだ。

光熱費と通信費とプロバイダ料、それに強制的に入らされた火災保険の引き落とし。

家賃は振り込みだから、めんどくさい。

引き落としにして欲しい。

大家さん、このマンションの最上階に住んでいるんだから、直接渡しにしてくれれば、振り込み手数料助かるのにな。

早く回転寿司のバイト代入らないかな。

末締め二十五払いだって。

まだまだ先だよ。

2001/10/30(火)

来春、妹が受験だ。

妹は私と違って頭がいい。

きっといい大学を受けるんだろう。

もし受かったら、一緒に暮らせって言われるんだろうな。

嫌だな。

私、来年就職したら、寮に入っちゃおうかな。

その方が安いだろうし。

それに妹と一緒じゃ、おちおち日記も書けやしない。

2001/10/31(水)

ハロウィンとかって、全然関係ない。

それが終わると一気にクリスマスになるんだろうな。

クリスマスプレゼント、バイト代が入ったら買おう。

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