恋愛小説〜らぶちゃんぽん

恋愛ミステリーです。

第三話「死者の日記〜後編」

2001/11/1(木)

早いね、もう十一月だよ。

寒いので、ちゃんぽんが美味しい季節です。

去年まで着ていたコート、もうボロボロ。

新しいのが欲しいけど、ダメダメ。

お金は玲二のために使うって決めたんだから。

口紅もなくなってしまった。

百円均一のでいいや。

2001/11/2(金)

バイト先のお寿司握ってるおじさんが一人、急に辞めちゃった。

だから今日はてんてこまい。

私は握る訳じゃないから関係ないけど、でもなんやかやと疲れた。

2001/11/3(土)

今日明日とバンド仲間となんかイベントがあるらしい。

私も仲間に入れて欲しいけど、そんな事言えないし。

バイトもなくて家にいる週末は、何をして過ごせばいいのかわからない。

玲二がいない週末なんか、来なくていい。

バイトしていた方がずっとマシ。

2001/11/4(日)

玲二、どうやらどっかの学園祭で演奏したらしい。

何で招待してくれないのかな?

私みたいに地味な子は、仲間に紹介するのが恥ずかしいのかな?

もっとおしゃれした方がいいのかな?

でも美容院に行くお金もない。

洋服を買うお金もない。

2001/11/5(月)

間違えてうっかり電話に出てしまった。

公衆電話からだった。

ツーって音がしたから。

女の人が

「マキ(本名)さん?」

て聞いた。

ドキッとした。

女の人は長い間黙っていた。

私も黙っていた。

電話を切っちゃえばいいのに、それが出来なかった。

渋谷のあの人だって予感がした。

「玲二に付きまとうのはやめてちょうだい」

と、女の人が言った。

私は何も答えられない。

何の話?

何で私がそんな事言われなくちゃならないの?

玲二は何も言ってなかったのに。

たぶん三十分くらいはそのまま二人とも黙って受話器を握っていたような気がする。

たぶんテレカの度数を全部使い切って、電話が切れるまで。

2001/11/6(火)

悪戯電話は来なくなった。

平日だけど、玲二のアパートに行きたかった。

でもあの女の人がいるような気がして、怖くて行けなかった。

2001/11/7(水)

ボーッとしてしまって、何度もお皿を落とした。

割れないプラスチックのお皿でよかった。

今日はもう帰っていいよと言ってくれたけど、帰ってもする事がない。

最後まで働けばバイト代が多くなるし。

バイトは九時まで。

まだ玲二は帰ってないのかな。

寂しい。

玲二に会いたいよ。

2001/11/8(木)

就職適性検査と、一般常識テストがあった。

上の空で適当にやった。

就職出来ないかもしれない。

2001/11/9(金)

明日は土曜。

行ってもいいよね?

いつもみたいに玲二の部屋に勝手に入っても大丈夫だよね?

玲二はちゃんと一人でいるよね?

怖い。

2001/11/10(土)

思いきって玲二に、電話の事を話してみた。

玲二が深刻な顔で黙っているから、心臓がドキドキした。

でも、玲二はちゃんと私を好きだと言った。

何があっても信じて欲しいって。

信じたいよ。

でもあの女の人は誰のなのか、どうして教えてくれないのかな。

2001/11/11(日)

ちゃんぽん屋さんで彼女に会ってしまった。

こんなところにまでつけて来たのだろうか。

玲二は困ったような、嫌そうな顔をしていた。

私達は何も話さず、ただ隣り合わせの席でちゃんぽんを食べただけだ。

そして同時に店を出た。

「マキ、悪い。話つけるから今日は帰ってくれ」

って玲二が言った。

女の人は勝ち誇ったような顔でちらっと私を見た。

泣くまいと思ったけど、泣きそうだった。

2001/11/12(月)

玲二から連絡はない。

電話が止まっているって言っても、公衆電話だってあるんだから、連絡出来るよね。

玲二は私よりあの人を選んだのかな。

私はどうすればいいんだろう。

2001/11/13(火)

玲二のアパートに行ってみようか。

でもきっといない。

2001/11/14(水)

やっぱり気になってしょうがないから行ってみた。

十一時頃玲二が帰って来て、私を見てびっくりしていた。

でも、泣きそうな私に事情を話してくれた。

玲二はあの女の人に脅されているんだって。

何をって聞いたけど、それは教えてくれなかった。

麻薬でもやったかなってちょっとだけ思ったけど、聞けなかった。

夜中の二時までとことん話し合った。

玲二のぬくもりは私のものだって感じる事が出来た。

でも、問題は解決していない。

2001/11/15(木)

週末まで玲二に会うのは我慢しよう。

今、玲二も苦しんでいる。

私はわがまま言わないで、玲二を信じて待っていよう。

2001/11/16(金)

会社四季報の見方、企業の採用動向とかいう講座があった。

でもちっとも頭に入らない。

株の事なんかわからない。

どうでもいい。

早く終わって欲しい。

何が?

自分でもわからないけど、早く厄介な事が何もかも終わって、ラブちゃんぽんしたい。

2001/11/17(土)

そわそわして朝六時に玲二のアパートに行ってしまった。

もちろん玲二は十時くらいまで起きてくれないけど、寝顔を見ているだけで幸せだから。

何を脅されているんだろう。

深刻そうだった。

だけど前に渋谷で見た時は、楽しそうだった。

玲二が起きて、マキって呼んだ。

寝ぼけていてもちゃんと私の名前を呼んでくれてよかった。

今日はあまり話さなかったね。

ラブちゃんぽんはお昼だけにした。

夜はあの女の人が来るかもしれないから?

2001/11/18(日)

やるしかないってどう言う意味?

殺すって事じゃないよね?

まさか違うよね?

こんな事Web日記に書いて大丈夫かな?

殺人未遂で捕まったりしない?

2001/11/19(月)

取りあえず変わらない毎日。

玲二は何を理由に脅されているんだろう。

私に言えないような事って何?

2001/11/20(火)

あの女の人はたぶんバンドの仲間だ。

何があったのか、バンドの他のメンバーに聞けばわかるかもしれない。

でも私は誰にも紹介されていない。

突然聞きに行っても、何も応えてくれないよね。

玲二は私の事、バンドの友達に話しているのかな?

あの女の人には玲二が言ったの?

気になる。

2001/11/21(水)

就職も勉強も手につかない。

玲二、最後に会った時思いつめてた。

こんな時こそ側にいてあげたいのに、行くのは怖い。

平日には来るなって、どうして言ったの?

2001/11/22(木)

明日は祝日だから回転寿司屋さんで朝からバイト。

眠らなくちゃ、失敗ばかりしてしまう。

でも眠れない。

2001/11/23(金)

今日は八時間立ちっぱなしで働いた。

でもかえって他の事を考える余裕がなくて、気持ちが楽だった。

眠い。

ずっと寝ていなかったから。

今日はぐっすり眠ろう。

2001/11/24(土)

玲二のアパートに行った。

なんと玲二は起きていた。珍しいね。

それだけ悩んでいるんだね。何も言ってくれない。

ただ、マキが一番好きだと繰り返すばかり。

信じていいよね。

今日はちゃんぽんに行かなかった。

玲二が家から出たくないと言うから。

私も早めに帰った。

2001/11/25(日)

今度の木曜日、スタジオの都合でバンドの練習が休みなんだって。

だから、話し合おうって言われた。

何を話し合うのかな。

不安になって聞いた。

そうしたらまた、やるしかないって。

やるって……「殺る」じゃないよね?

何をやるのって聞いても大丈夫だと言うばかり。

でも帰り際、秘密の頼みごとをされた。

どうしたらいいんだろう。

玲二の頼みなら何でも聞いてあげたいけど。

2001/11/26(月)

今日は回転寿司の初給料。

十月は途中からだったから二万ちょっとしかないけど、ファーストフードの分も少しあるから、二万降ろした。

このお金を、玲二のために使うとしたら、何を買うのが一番正しい?

クリスマスプレゼントは何?

違う、その前に誕生日プレゼントだ。

2001/11/27(火)

覚悟を決めた。

玲二が好きだから。

2001/11/28(水)

今日は玲二の誕生日。

私からのプレゼント、喜んでくれたみたい。

「マキの事、信じてた」って。

明日は対決。

考えてもしょうがない。

もう寝よう。

2001/11/29(木)

今日は三人で話し合いをする日。

相手が応じれば、二人でうちに来る。

応じなければ玲二だけ来てどうするか相談する。

怖い。

テレホタイムじゃないけど、ネットでもしていないとどうしょうもない。

約束は五時。

私は大学を休んでしまった。

まさかうちで彼女を…………そんなんじゃないよね?

話し合いをするだけでしょ?

怖い。

どうしたらいいの?

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